10歳の子供が9.11で大切な父親を亡くし、家族やたくさんの人と出会いながら成長していくお話です。切なく深く見終わった後、心が揺すぶられます。子どものために生きている間にしておきたいこと、子供が苦悩に陥った時にどう関わっていけばいいのか、珠玉の数々、気づきの数々が詰まった作品です。
作品情報 ★★★★★
監督 | スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン |
キャスト | トム・ハンクス (トーマス・シェル) |
サンドラ・ブロック (リンダ・シェル) | |
トーマス・ホーン (オスカー・シェル) | |
マックス・フォン・シドー (間借り人) | |
ヴァイオラ・デイヴィス (アビー・ブラック) | |
ジョン・グッドマン (スタン) | |
ジェフリー・ライト (ウィリアム・ブラック) | |
ゾー・コードウェル (オスカーの祖母) | |
原作 | ジョナサン・サフラン・フォア |
原題 | Extremely Loud & Incredibly Close |
制作国 | アメリカ |
制作年 | 2011年 |
上映時間 | 129分 |
あらすじ
アスペルガー症候群の疑いのある10歳のオスカー、父親のトーマスは他人と会話できるよう調査探検をしながら成長を見守る。9.11アメリカ同時多発テロ事件で父親トーマスは亡くなる。父親の死を受け入れられず、1年後、父のクローゼットの花瓶の中から封筒に入ったカギを見つける。父はそのカギに何かを残したはず、簡単に探せたら意味がないと言うメッセージだと思い、封筒に書いてあった「ブラック」という文字を頼りにニューヨーク中のブラックさんを探し歩く。
印象に残ったセリフやシーン(ネタバレあり)
「消防士が来るのを待つよう指示されている」と何度もトーマスが電話で言います。
テロから1時間以上も待っていることが分かります。階段で下りていたら助かった人がたくさんいただろうと思います。一人だけ階段で下りてしまったら軽蔑されるのか、その時の状況は計り知れませんが、経験したことのない人の指示より、自分が生きる方法を第一に考えることが大切だと思い知らされます。
「太陽が爆発しても地球に光が届くまでの8分間世界は変わらず明るく太陽の温かさを感じる。」
見えていることが真実のように思うけど、それが全てでもなく本当とも限らない。
事件後、何度かトーマスはオスカーに電話をする。そのメッセージを聞いたオスカーは
「パパからの最初のメッセージの時、僕は校庭にいて無駄に時間を過ごしていた。」
自分の知っていることって本当に少なくて、今現在見えていることしか知らない。知って何か出来るわけではないけど、知らないで呑気に過ごしていた自分が許せないってことがあります。
私も父が亡くなった時、どうでもいい事で時間をつぶしていた自分が許せないでいました。無駄な時間を送ってはいけないっていう強迫観念があったり、無駄に子供の心配をするのもそんなことから来ているのかもしれません。
子どもに接する親として印象に残ったセリフやシーン
「何でもやってみなきゃ」とブランコに乗るのを嫌がるオスカーに父が言うと、
「僕にがっかりしないで」とオスカーが言います。
顔ががっかりしていると子供は傷つく、斎藤一人さんの声が聞こえてきそうです。
「子どもの成長を出来ないことを急がせてやらせるのではなく、待ってみたい。」と父のトーマスは言います。
子育てしていると、親は忙しくて子供をせかしてしまいます。早くやればいいのに、って「早く、早く」ってまくしたて、何かに挑戦しようとしている子供にも、ついせかして背中を押してしまいます。
出来ないと、がっかりしてしまったり。
「待つ」って難しい事ですが、本当に大事な事だと思います。
「パパは僕を対等に扱った」
アドラーの本でも、子供も対等に扱う必要性が再三出てきます。叱ったり押さえつけたことは、子供が未熟なものとしてとらえ、親が上から目線で都合よく押さえつけてきた結果だと思います。
対等に扱うと言うのは難しい事ですが、子供の才能や能力を伸ばし人格者にするには親が知っているか知らないか、やるかやらないかで大きな差が出ると思います。
「すぐよくなるから、きっと普通になる」といったオスカーに、
「そんな必要ない今のままがいいわ」と母が答えます。
どんな事があっても、この一言が言える母親になりたいです。
オスカーが調査をしているのを母親が全て知っていたと言った時、トーマスは言います。「スパイしたの?」
母親のリンダはいいました。 「近づこうとした」
子供を心配して、行動を把握しようとしたり、詮索していろいろ聞き出そうとしてしまうのが親の常ではないでしょうか。心配だから子供の事を知るのと、子供と「近づきたいから」知るのでは大違いです。
子どもに詮索された時、「近づこうとした」という言葉、温かいですね。
まとめ
この映画には無駄な言葉や場面は一場面もないと言えるほど、どの言葉にも重みがありました。サンドラブロックのインタビューからもその事が分かります。
オスカーの苦しみと成長、それを支える母の苦しみと深い深い思い、魂がゆすぶられる映画でした。
劇団EXILEのメンバーの佐藤寛太さん(いのちのスケッチなどで主演)は中学時代に、この映画を見て同年代の少年の演技に感動し芸能界を志したそうです。
親だけでなく、子供にもとても心に残る作品と言えます。親子で是非一緒に見たいですね。